INTERVIEW 01 徳田雄一郎 YUICHIRO TOKUDA

1981年生まれ、千葉市出身。サックス奏者/ボーカリスト/作曲家。2003年、バークリー音楽院卒。06年、自らが代表を務めるインディーズレーベル「GoodNessPlus Records」を設立し、現在までに6枚のアルバムを発表。

熱く叙情的で胸打つ 世界を旅するサックス奏者が見た景色

[P] ENZO / [HM] MADOKA TAKEDA / [TEXT] KENJI SUNOHARA

SESSION67の記念すべき第1回目のセッションでは、ダレン・バレットとケニー・ギャレットという、「自由」な音楽を愛し、「自分」というスタイルを貫き続ける偉大なふたりから薫陶を受け、世界を舞台に活躍するジャズ・サックス奏者 徳田雄一郎に話を聞いた。~前編~

「自由」という自分だけのカタチを求めて

――徳田さんは、2011年5月、マレーシア「BORNEO JAZZ FESTIVAL 2011」に出演以降、世界各地でさまざまなツアーの開催やフェスへの出演を果たされています。ジャズ・クラブの数でいえば世界一を誇る、日本のジャズのマーケットでの活動に満足することなく、あえて海外へ飛び出していくきっかけは何だったのでしょう?

ぼくがジャズをはじめたのは、ジャズの「自由」なスタイルに憧れたからなんです。高1のときに陸上部の仲間と組んだロックバンドではボーカル担当で、LUNA SEAとか黒夢とか、ヴィジュアル系の曲をやってました。

父親のレコードコレクションにあったポールデスモンド&ジェリーマリガンの『Two of a Mind』を聞いて衝撃を受けて、ちょうど同じ頃、亡くなった叔父の形見であるアルトサックスを祖母から手渡された。そういう出合いに何か感じるものがあって、それからは夢中でサックスを吹くようになってました。その後、バークリー音楽院へ留学したんだけど、はじめて学生同士のセッションをやったときに、これじゃダメだと思い知らされた。ただ「自由」なだけじゃダメなんだって。自分の力のなさを痛感して、ひたすら練習に打ち込むことになると同時に、普通にみんなと同じことをしていても、自分は生き残れないと気づいたんです。だから、早いこと自分のオリジナルバンドをつくって、全部オリジナルの曲でライブをやれるようになろうって。自分だけの音楽のカタチをつくろうって、心に決めました。

アメリカから日本へ戻って活動をはじめた当時も、オジリナルバンドのライブだとうたっているにもかかわらず、『Autumn Leaves(枯葉)』とか『いつか王子様が』とか、スタンダードなジャズをやってよって、よくいわれました。でも、その頃から、全部オリジナルの曲でやるんで、また別の機会にって断ってきた。それからも自分の音楽を受け入れてくれる場所を探し続けていたら、海外のフェスからオファーが来るようになって。いろいろな国へ行って演奏するようになりました。今も、次にどんなアクションを起こそうかなって思いながら、世界を回遊している感じですね。

知らない国を知っていくおもしろさと、
自分たちの音楽を知ってもらえる快感

――これまで、いろいろな国でライブをされているわけですが、印象的な国はどこになりますか?

中国へ行ったときには、インターコンチネンタルの70階にスイートみたいな部屋が用意されていて、スゲーなって思いましたよ(笑)。食事とワインが果てしなくうまかったのは、ブルガリア。インドではどこへ行ってもカレーがうまかったんですけど、音楽的なことでも、古典的なインド音楽をジャズにぶち込んだ、インディー・ジャズ・フュージョンを聞いて衝撃を受けましたね。

もともとインドへ行ったのは、マレーシアのフェスで出会ったインドのミュージシャンに誘われて、ライブを開催したのがきっかけなんですが、以来、6回ほど行っています。2016年9月に出演した「India's premier new age Jazz festival」では、ニューデリー、コルカタ、プネー、ゴアの4都市を、1週間かけてツアーしてきました。参加していたのは、ぼくのバンド以外に、イギリス、カナダ、スウェーデン、フランスの合計8バンド。インドではスタンダードなジャズはあまり好まれず、オリジナルのジャズが主流なんですが、このフェスも、新しい音楽をつくろうっていう熱気があふれていました。

――海外で活動をするにあたって、いろいろなトラブルに見舞われることも?

トラブルはいろいろありますよ。楽器が届かなかったり、パスポートを紛失しかけたり。飛行機が遅れたり。

中国へ行った時なんて初日は用意されていたウッドベースがホコリまみれで弦にカビが生えてて…。音響さんもいないしマイクもない。翌日はもう少しちゃんとした場所だから大丈夫だろうと思っていたら、ギターアンプが壊れてて。さらに次の日はドラムのシンバルがない。とにかく必要だからとスタッフに頼んだら、届いたのが銅鑼で。連日のトラブルでこっちも若干キレ気味だったんですが、ドラマーの長谷川ガクさんが空気を読んで、「オレ、これでやるよ…」って。シンバルのように横置きじゃなくて縦置きの銅鑼を叩くっていう特殊なスタイルでしたけど、実際やってみたらそれはそれで音が面白くて、いいじゃんこれって。

トラブルをあげたらキリがないんだけど、それでもいろんな出会いがあるからやめられない。

――そうした出会いという意味では、オランダを代表するサックス奏者であるヨリス・ポスティムスとの出会いも大きいのでは?

ヨリスとはじめて会ったのは、中国の南京国際ジャズフェスティバルです。実際にヨリスのライブを見た印象は、ぼくみたいな演奏をする人だなって。とにかく音がアグレッシブ。ただ演奏中、ぼくはわりと動かない方ですが、ヨリスは動きが激しいというか、まさに全身で吹いている感じ。

ぼくはヨリスの音を聞いて鳥肌が立ったんですけど、ヨリスもぼくの音楽を気に入ってくれて。意気投合した結果、いつか一緒にやろうよって。それからぼくのバンド、RALYZZDIGの10周年ツアーのとき、ヨリスを日本に招いてメンバーに入ってもらいました。次は逆に、ぼくがヨーロッパへ行って、彼のバンドのメンバーになってツアーを。そうしたら今度はヨリスが、日本人バンドでアルバムをつくろうっていい出したので、2015年に東京で『Tokyo's Bad Boys』(ヨリス・ポスティムス《A.sax》、徳田雄一郎《A.sax》、中江裕気《Tenor Sax》、柳隼一《Pf》、徳田智史《Ba》、長谷川ガク《Dr》)をレコーディング。翌年、日本で発売記念のツアーをやったんだけど、アルバムの評判がすこぶる良くて、ツアーも大成功でした。

2017年4月からは『Tokyo's Bad Boys』のメンバー6人で、オランダとベルギーでツアーをやります。ツアーの途中には、ブランフォード・マルサリス、カート・エリング、スティーブ・コールマン、ジェフ・パーカーとかも出演する、Transition Festival 2017にも出演予定。ほかにも、オランダでいちばん有名なジャズイベント、North Sea Jazz Festivalからオファーがきています。

――やはり、さまざまなアーティストとの出会いが、海外へ飛び出すモチベーションになっている?

それもありますけど、それだけじゃない。たとえば海外のフェスに参加したら、出演しない日はひたすら酒飲んで酔っ払って、他のアーティストの音楽を聞けるっていう、最高の時間が過ごせますからね(笑)。もちろん、それで演奏がスゴいなって思ったら、必ず声をかけるんですけど。逆に、日本人のバンドがあまりツアーをやったことのない国に行くと、ぼくらの音楽にスゴい興味をもってもらえるっていう快感もあるかな。そして知らない国へいったら、とにかく街に出て、その国のものを食べて、酒を飲んでみる。そうやって本当にその国のことや、その国の音楽を知っていくのも、おもしろいですしね。

『Nothing there』を作曲できたことが、
バークリーで学んだいちばんの意味だと思う

――そうした音楽との向き合い方は、バークリー音楽院で学んだ経験が影響しているのでしょうか?

ぼくにとってバークリーでの経験は、圧倒的に練習時間がとれたってことが大きいんだと思います。練習室にいても、常にうまい人の音が聞こえてきて、それで教えてもらったりとか。学生同士、学内でセッションしたり、ボストンのウォーリーズ・カフェとか、ニューヨークへ遊びに行っては向こうのミュージシャンとセッションしたり、常に緊張感があるなかでアドリブを磨くことができた。とにかく最高の環境で音楽に打ち込むことができたと思います。

留学中は、いろいろな場所へ音楽を聞きにも行きましたし、ストリートライブをきっかけに声をかけられて、地元のバーでライブをやったりもしました。いちばん最初のオファーは、とあるバーのオーナーからだったんですけど、100人くらい入る店で、音楽を聞いている観客がみんな黒人。それが妙にうれしくて、アメリカでライブやっているんだなって、感慨深かったですね。まぁ、ギャラはピザ1枚でしたが(笑)。もちろん、学校の仲間たちと夜中に路上で酒を飲みまくっていたら、警官から銃口を向けられたりなんてこともありましたよ。「おまえらドラックやってんだろ!」って。そんなのやってませんよって、必死で謝ったら、「アメリカは路上で酒飲んじゃダメなんだぞ」って説教されたくらいで許してもらえたんですけどね。

――同時期に在学していた学生から影響を受けたりとかは?

ちょうどその頃在学していたのは、ちょっと先輩にジャズピアニストの上原ひろみさん。同期で活躍しているのは、エスペランサ・スポルディングやBIGYUKI、プロデューサーの金坂征広。SOFFetっていう男性2人組のスウィング・ラップ・ユニットのYoYoも同期ですね。彼の場合、卒業後に、現在のぼくのバンドのコアメンバーである、ギタリストの鈴木直人と出会うきっかけをつくってくれたので、少なからぬ影響を受けています。

ただ、彼らの音楽からさまざまな刺激を受けながら、ぼくがバークリーにいる間に追究したのは、サックスの12音の使い方を明確にしていくっていう、基本中の基本。他の人なら、バークリーに入る前にとっくに理解していることだったんですよね。

「守破離」ってあるじゃないですか。あるとき気づいたんですが、ぼくのサックスはその逆で「離破守」だって。まず、人のやっている音楽から離れて、自分のやりたいことを突きつめる。次に、自分が今まで突きつめてきたことを破って、新しいものを取り入れていく。最終的に、伝統なり基本をあらためて守るっていう、逆の進み方。

でも、それが良かったんです。だからこそ、ぼくの1stアルバムのオープニング曲でもある『Nothing there』みたいな曲ができたと思います。卒業間際に、ボストンの500人くらい入るホールでやったライブで初披露したときには、観客はもちろん同期の学生からも、ものすごい反響があったんですが、今でも、どこの国で演奏しても反響がある。ぼくが海外でツアーができるのは、あの曲のおかげなんですよ。そういった意味で、バークリー時代のぼくに影響を与えたものがあったとするなら、いちばんは自分が『Nothing there』という曲を書けたという事実です。

後編へ

TOUR INFO

North Sea Jazz Festival, Rotterdam,Nerherlands.

2017.06.07(FRI)

ツアー参加メンバー
coming soon

Joris Posthumus Group
ヨリス・ポスティムス グループ
"Tokyo's Bad Boys" ニューアルバムリリースツアー in Europe VOL.2 Summer

2017.07.04 - 07.12

ツアー参加メンバー
ヨリス・ポスティムス (Alto & Soprano Sax) / 徳田雄一郎 (Alto Sax) / 中江裕気 (Tenor Sax) / 柳隼一 (Piano) / 徳田智史 (Bass) / 長谷川ガク (Drums)

MOVIE

LIVE

  • 2017.05.06 (SAT)
    START 20:30
    徳田雄一郎&柳隼一 徳田雄一郎 (Sax) 柳隼一 (Piano)
    【千葉県】h.s trash(千葉県市川市市川1-3-20-3F)
  • 2017.05.27 (SAT)
    徳田雄一郎RALYZZDIG 徳田雄一郎 (Sax & Vocal) 田村和大 (Piano) 鈴木直人 (Guitar) 大垣知也 (ElcBass) ませきゆうと (Drums)
    【東京都】大塚ミュージック・フェスティバル2017@JR大塚駅北口ステージ
  • 2017.05.30 (TUE)
    START 21:00
    徳田雄一郎&加藤晃司 徳田雄一郎 (Sax) 加藤晃司 (Bass)
    【千葉県】Moon Blossom(千葉県千葉市中央区新千葉2-16-11 鈴木ビル1F)
  • 2017.06.03 (STA)
    OPEN 18:30
    PPC Art Salon リニューアル記念ライブ PLV講師陣多数出演 Supecial Guest : 徳田雄一郎 (Sax)、ませきゆうと (Drums)
    【千葉県】PPC Art Salon(千葉県千葉市中央区市場町2-6)
  • 2017.06.24 (SAT)
    START 19:00
    徳田雄一郎RALYZZDIG 徳田雄一郎 (Sax & Vocal) 田村和大 (Piano) 鈴木直人 (Guitar) 大垣知也 (ElcBass) ませきゆうと (Drums)
    【千葉県】Clipper(千葉県千葉市中央区中央港1-24-14 シースケープ千葉みなと1F)