INTERVIEW 14 徳田雄一郎RALYZZDIG YUICHIRO TOKUDA RALYZZDIG

2003年にバークリー音楽院を卒業後、サックス奏者、ボーカリスト、作曲家として活躍する徳田雄一郎をリーダーに結成。これまでにヨーロッパ、カナダ、マレーシア、インドなど、世界各地でツアーを敢行し、いずれも大成功を収める。現在のメンバーは徳田のほか、鈴木直人(Guitar)、柳隼一(Piano)、大垣知也(ElcBass)、柵木雄斗(Drums)。

楽曲のなかに息づく
世界を旅した記憶のかけら

[P] ENZO / [TEXT] KENJI SUNOHARA

アルバム『Crossing Colors』の発表から5年。それからも歩みを止めることなく、世界をかけめぐりながら、常にジャズの最前線を走り続けてきた。そして、2018年、待望のニューアルバムのリリースが決定。新たなメンバーを迎え、新たな次元へ足を踏み出そうとしているRALYZZDIGに、お話をうかがった。(前編)

若いメンバーたちが発する音楽的な力が
RALYZZDIGに新しい表情を加えてくれた

――今回、新たにアルバムをリリースされるそうですが、どういったアルバムなのでしょうか?

徳田
タイトルは『WIND』。正式なリリースは2018年10月3日ですが、9月16日のYOKOHAMA本牧ジャズ祭で行う単独公演で、先行発売する予定です。

――通算7枚目のアルバム?

徳田
RALYZZDIGとしては、流通にのっていないデモアルバム1枚と限定盤1枚制作しているので、今回のアルバムは通算8枚目。

――タイトルの意味は?

徳田
2017年7月にスタートした、コニカミノルタ・プラネタリウムの特別プログラム「Space Dreamers 宇宙兄弟 南波六太がやってきた!」の主題歌として、ぼくが作曲した「WIND ~ Space Dreamers Version」が使われていたんですが、その評判が非常に良かったんです。それもあって、「WIND」という言葉がつく楽曲がさらに2曲できあがり、アルバムのタイトルもおのずとその名前に。

――では、アルバムのコンセプトは?

徳田
前作の『Crossing Colors』を発表したのが2013年。それからメンバーが入れ替わったり、いろんな場所でライブをやったり。今のメンバーになって全員揃って行ったことはないんですが、マレーシアやインド、ブルガリア、ヨルダン…。さまざまな世界を旅した記録というか、記憶というか。自分たちがそこで感じたことや、起こった出来事に発想を得て作られたのが『WIND』なんだと思います。

――前作との違いがあるとすれば、どんな部分?

徳田
やさしくなったと思います。

鈴木・柳・大垣・柵木
確かに(笑)

――“やさしく”なったというと、どのあたりが?

鈴木
雄一郎とは1枚目のアルバムから一緒に作っているんだけど、これまでの曲はネガティブなエネルギーにあふれていたっていうか。
自分としてはそれも好きだったんだけど、今回のアルバムに収録されている曲はどれも、音楽の難易度は相変わらず高いままで、そこから漂ってくるイメージがソフトになったと思う。

徳田
これまで作ってきた曲は、直人さんのギターだったり、最初の頃でいえばスガダイローさんのピアノのインパクトだったりが、そのまま曲に反映されていたと思う。ネガティブな曲だからこそ発せられる強いパワーを、ミュージシャンがもっている個性とか、方向性とかで引き出してもらっていた感じ。

――変化した一番の要因はなんだと?

徳田
メンバーがよりパッションにあふれたミュージシャンになってきたというか、今は直人さん以外、ぼくよりもみんな年下ということが大きいかな。
曲自体が放つパワーがそれほど激しくなくとも、若いミュージシャンだからこそ発せられる音楽的な力だったり、音の素晴らしさだったりが、曲を引っ張っていってくれる。このメンバーでやっていると、曲のパワーに頼らずとも、自然におもしろくなっていくというか。その結果、やさしくなったというか、聞きやすくなったんだろうと、ぼくは思っています。

――メンバーの年齢構成が変わって、作る曲の個性も変わった?

徳田
これまでは、ぼくが一番年下だったので、ぼくがバンドのなかでワチャワチャ盛り上げていたんですけど。それが今は、3人が勝手にやってくれているんで(笑)。
それが悪い方向ではなく、いい方向にはたらいているのが、今の状況ですね。

突然のトラブル、そして、思いもよらぬ結末
インスピレーションにあふれたツアーでの日々

――今回のアルバムのなかで、お気に入りの曲を選ぶとすれば?

鈴木
「Brings Me Southern Distance」がすごい好き。ほかにも「Lotus flowers」や「The Hat Catches The Leeway」もいい。
この3曲は、RALYZZDIGの新機軸となる曲だってことが、一番の理由かな。

――まず「Brings Me Southern Distance」はどんな曲?

徳田
「南の彼方に導かれて」という意味なんですが、作曲のインスピレーションを与えてくれたのは、インドへツアーに行ったときの体験が大きいですね。
マレーシアでツアーをやったあと、最初はスペインに飛ぶ予定だったのが、急遽、インドに行くことになって。それに行ったら行ったで、いろいろあって、南の彼方で冒険した感じでした。

鈴木
メンバーが分散してリキシャに乗っていたんだけど、途中でバラバラになってはぐれちゃったりとか。あと、ライブ中に停電になったときも、すごかったね。

徳田
確かに。あれは印象深い。
インドじゃよくあることなのかもしれないですけど、演奏中、急に停電になって、照明は落ちるし、アンプも使えないし…。そんな状態でも演奏を続けていたら、曲の頭がジャンって入るのにちょうど合わせたように、電気が復旧して。

鈴木
演奏に合わせてブレーカーを上げたんじゃないかって思うくらい、ドンピシャのタイミングで。

徳田
それを見ていた観客がものすごい盛り上がって、ぼくらもそれを見てすごく感動して。あの瞬間を味わったから、この曲ができたんだと思う。

――では、「Lotus flowers」と「The Hat Catches The Leeway」は?

徳田
「Lotus flowers」については、インドとかマレーシアに何度か行っているうちに、日本にはちょっとないようなメロディーラインを感じるようになって。そういった感覚的なものや、旅の間に感じたことが作曲につながっていると思う。
「The Hat Catches The Leeway」はというと、marvoceanistaっていう、ぼくに衣裳を提供してくれているブランドのクリエイターさんとのやりとりがきっかけで生まれた曲。ぼくは昔から、帽子に対して拒否反応があったんですけど、「絶対に似合うから!」っていわれて、無理やりかぶらされまして…。で、実際にかぶってみたら、これがすごく快適で便利だった。帽子をかぶるだけで、いろいろな行動が自由になったことに感じるものがあって、この曲を作りました。

――ほかの皆さんのご意見をうかがえますか?


「Lotus flowers」は最後のメロディーのところ。あそこは大垣君が書いてくれたんですけど、いいですよね。

大垣
技術的な話をすると、あの部分は、ピアノの左手部分とエレキベースが、メロディーラインでかけ合いをしているイメージで書きました。レコーディングのあのテンションやスピード感のなかで、あれを左手で弾くのはかなり難しかったと思いますが、見事でしたね。


そりゃ、すごい練習しましたから!弾けないと怒られちゃいますから(笑)

柵木
演奏も発言も、柳さんらしい(笑)


おかげで、レコーディングは1発OK。その瞬間はヘラヘラして、余裕ですよって顔していましたけどね。まぁ、とにかく練習したんですよ。

鈴木
えらい、柳はえらい。ホント、あのときはカッコよかった!

徳田
あの部分があったから、曲がより生きたかなって思いますね。

柵木
とにかく、どの曲もレコーディングの雰囲気というか、みんなのテンションがすごい感じられるから、ぜひ聞いてもらいたいです!

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

RELEASE

RALYZZDIG 5年ぶりのNEW ALBUM

僕らの世界観を変えた曲コニカミノルタ・プラネタリウム作品「Space Dreamers 宇宙兄弟 南波六太がやってきた!」主題曲【WIND】をメインに据えた全11話のジャズストーリー

2018年10月3日発売
RALYZZDIG 8th new album
WIND

→ アルバムのお買い求めはこちら

MOVIE

LIVE

  • 2018.12.16 (Sun)
    OPEN 13:30〜
    徳田雄一郎RALYZZDIG 徳田雄一郎レリーズディグ - クリスマスジャズコンサート 徳田雄一郎(Sax/Vocal)、鈴木直人(Guitar)、柳隼一(Piano)、大垣知也(ElcBass)、柵木雄斗(Drums)
    【千葉県】千葉市美浜文化ホール(千葉市美浜区真砂5-15-2)
  • 2018.11.29 (Thu)
    OPEN 18:00〜
    徳田雄一郎RALYZZDIG TRIO from RALYZZDIG 徳田雄一郎(Sax/Vocal)、鈴木直人(Guitar)、柳隼一(Piano)
    【東京都】銀座 No Bird(中央区銀座7-3-7ブランエスパ銀座B1F)
  • 2018.11.10 (Sat)
    OPEN 20:00〜
    徳田雄一郎RALYZZDIG 4tet from RALYZZDIG 徳田雄一郎(Sax)、柳隼一(Piano)、大垣知也(ElcBass)、柵木雄斗(Drums)
    【千葉県】h.s.trash(市川市市川1-2-20 3F)
  • 2018.10.09 (Tue)
    OPEN 20:00〜
    徳田雄一郎RALYZZDIG DUO from RALYZZDIG 〜 徳田雄一郎&鈴木直人 徳田雄一郎(Sax/Vo)、鈴木直人(Guitar)
    【東京都】Donfan(豊島区南大塚2-32-8 B1)
  • 2018.09.16 (Sun)
    OPEN 13:30〜
    徳田雄一郎RALYZZDIG 徳田雄一郎RALYZZDIG 徳田雄一郎(S/Vo)、鈴木直人(G)、柳隼一(P)、大垣知也(ElcBass)、柵木雄斗(Dr)
    【神奈川県】横浜 横浜市開港記念会館(横浜市中区本町1丁目6番地)
  • 2018.07.21 (Sat)
    OPEN 17:00〜
    徳田雄一郎RALYZZDIG ドンファン40周年記念コンサート 徳田雄一郎RALYZZDIG 徳田雄一郎(Sax/Vo)、鈴木直人(Gt)、柳隼一(Pf)、大垣知也(ElcBass)、柵木雄斗(Drs)、ゲスト:六角屋雄介(Sax & EWI)他
    【東京都】大塚 南大塚ホール(豊島区南大塚2-36-1)